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【不定期連載】あめつちの言ノ葉を読み解く 第1回『あ』

日々のお勤めお疲れさまです。アカツッキーです。

以前告知していた連載企画の第一回目。始めていきたいと思います。

 

※注意※

ブログ内に書いてあるものは筆者の個人的主観と偏見による意見であり、作品の生みの親である今田ずんばあらず氏の思想等とは一切関係ありませんし、的外れな場合もあります。御理解の上閲覧ください。

あとネタバレを含みます。

 

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あめつちの言ノ葉

◆第一章 模倣と翼の章(2002~2008.01)より

ソフィアの物語(仮)

ジャンル:SF/概算文字数:11500文字

 <概要>

地中海の近くに存在するという神聖渓谷。そこで目覚めたサフィアは、フェニックソードと名乗る不思議な剣に尻を叩かれ、ペルシャ川を辿って海へと向かう。そこで出会う翼の生えた少女、ソフィヤ・ブルースカイ。その少女を狙い、パララ軍曹率いる地軍隊が迫りくる。二人の運命やいかに?

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~ここから感想~

 

 この物語の登場人物であるソフィヤ・ブルースカイは、この『あめつちの言ノ葉』のもう一人の主人公と明言されている。この『ソフィアの物語(仮)』における主人公はサフィアという少年であるが、この物語の元となったのはずんば氏が小学校2~4年生の頃に夢に登場した一人の少女だという。幼き日のずんば氏はその少女を『ソフィヤ(後にソフィアに変化する)』と呼び、彼女との物語を夢想し始めたことが、彼のその後の創作に大いに影響を与えている。

 

 内容を見ると、それはけっして上手とは言えない文章である。物語の構成も、小説家になろうに投稿される、いわゆる「なろう小説」を覗けばいくらでも似たようなものが見つかるだろう。

だが私はこの物語の書き方に見覚えがある。それは、自分もまたこうした文章を書いていたからだ。

 今でこそ動画を作っている私ではあるが、学生の頃はもっぱら物書きの世界にいた。だからこそ、この稚拙とも言うべき書き方に親近感を覚える。

 

 例えば名前を少し捻りたくなるところ。主人公・サフィアを導く剣は「フェニックソード」と言うが、小中学生くらいなら「フェニックソード」と付けたがるだろう。また、登場人物の一人、ソフィヤ・ブルースカイも「ソフィ」ではなく、「ソフィ」と呼びそうなものである。こうしたネーミングセンスは、後半に登場する地軍隊を「デスフェニックス」と読ませていることからも容易に想像できるが、あえて少し変えること(フェニックスの「ス」を抜いたり「ヤ」を「ア」にするなど)で、自分は他者とは違う、既存作品にはない表現だ!というオリジナリティを感じられる。他者と違うという感覚は、創作を始めた頃の人間にとってはどうしようもないほど甘美な麻薬なのだ。

 

 また、地文よりも会話が多いのが見て取れる。これは頭の中で思い描く風景や動作をきちんと描写するだけの知識や語彙に乏しいためである。そして、一つ一つの文章はそのほとんどが短文で、必要な情報だけを提示している。文末が「~だ(~た)」という表現が多いのも、ぶつ切りの印象を強めている。

 書道の「つづけ字」や英語の筆記体のように、文章にも前後へのつながりを意識した表現というものがあり、これがすんなりとつながる文章というのは読んでいて気持ちがいい。だが、この物語にそうした気持ちよさは無い。

 

 他にも、脈絡のないご都合主義や、ソフィヤをソフィアと書くなどの表記のゆらぎ、序破急も起承転結も感じない突然の展開など、創作したての頃を思い出す表現がてんこ盛りである。

 

「ずんばの作品をこれ(あめつちの言ノ葉)から入る人はまずいない。他の作品に触れて、興味を持ってくれた人が手にとってくれたらいいなと思っている」

 

 というのはずんば氏本人の言葉である。私のように後期の作品である「イリエの情景」などから 彼の物語に触れ、そして同程度のレベルを求める読者からすれば非常に読みづらい作品と言えなくもない。

 けれど第0回でも書いたとおり、これは彼の歴史なのだ。ここからが始まりであり、終わりはまだまだ果てしない。

 

 この「ソフィアの物語(仮) 」は、幼き日の空想を明文化したものであり、その物語の冒頭に当たる。きっとここから先の物語が世に出ることはないだろう。正確に言えば、当時の雰囲気をまとった状態でこの物語の先が描かれることはないだろう。今のずんば氏が物語を書いて世に出すことは可能かもしれないが、その時はきっとタイトルの(仮)の文字は無くなる。それはもう、この物語とは違う別の物語なのだ。

 これから先、サフィアがどんな成長を遂げていくのか、スフィヤの故郷はどんな風景が広がっているのか、パララ軍曹や地軍隊とどのような戦いを繰り広げるのか……それはきっと、ずんば氏の中でのみ生き続けていくのだろう。

 

 可能ならばその物語をもう少し覗いてみたかった。

 というのは、少々野暮かもしれない。 

 

 ソフィアの物語(仮) / 2020.01.17 読了

 

著者・今田ずんばあらず氏:Twitter

イラスト・秋月アキラ(大城慎也)氏:Twitterf:id:gotenmari:20200118150858j:plain

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