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【読書感想文】無名の一次創作文芸個人サークルが1年間で500部頒布する方法#むいちもん

累計96日目。

日々のお勤めお疲れ様です。アカツッキーです。

毎日投稿が出来なくなってきた今日このごろです。初期の頃と違って単純に忘れたってことは無く、大体開きはするんだけど疲れていいやぁってなることが多いです。うむむ……もっと意識高くしていかなければ(なんか違う)

 

お知らせ1

かつて国家予算を投じて「ずんだホライずん」としてフルアニメーション化した東北ずん子が、今度は3Dアニメ製作のためのクラウドファンディングを10月18日(木)から始めました。目標金額は350万円。 

まーた高額だなぁ、と思ったそこのあなた。安心して下さい。

既に達成済みです。

24時間以内で350万円を集める力。日々の積み重ねによる信頼に裏付けされたものですね。

350万円達成でアニメは3分間制作されます。現在はストレッチゴールとして目標金額を650万円に設定、7分のアニメを作ろうとしています。

勝ち確なので興味のある方、特にBlenderという3D制作ソフトに興味のある方は支援を検討してみてはいかがでしょうか?

 

また、これに合わせて公式同人誌として販売された公式小説1・2がPixivのBOOTHで電子書籍として販売開始されました。合わせてどうぞ。

 

 というわけで、表題。

 

 読書感想文3回目。前回、前々回に引き続き同じ作家さんの作品です。

 

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「無名の一次創作文芸個人サークルが1年間で500部頒布する方法#むいちもん」

著・今田ずんばあらず(Twitter)

絵・ホノカ(Twitter/Pixiv

 

 2018年8月10日に頒布が開始された著者の最新作。

 2016年秋からおよそ1年間の間に約500部の自著を頒布した実体験を記した本。同書の中で著者自ら言っていることだが、こちらは「これを読めば、あなたの作品がイベントで飛ぶように売れる!?」というようなハウツー本ではなく、あくまでも実体験に基づく「事実」を記したものである。なお、巻頭と巻末には表紙の女性を主人公としたSS(ショートストーリー)が掲載されている。

 

 内容をおおまかに分けると

・イベント時の設営について

Twitterなどの告知について

・地方イベント参加(遠征)について

・委託について

 以上4つの項目について話をしている。それに加えて、自身の活動に大きな影響を与えた、尊敬する4つのサークルについて書いたコラムや、これまでの参加したイベントとイベントごとの頒布数についても記載されている。

 

 通常の小説とは異なり内容について詳しく述べてしまうとこの本の価値を下げてしまう恐れがあるので(手元にお迎えしなくていいかなという気持ちにさせてしまっては意味がないので)、内容については表面をなぞる程度にしておこうと思う。

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 また、同人に関してあまり知識がない方のために最初に話をさせていただきたいのが、同人イベントにおいて小説(文芸)というのは頒布が非常に難しいという事だ。文芸オンリーイベントなどはまた違ってくるのだが、特にコミックマーケットなどのようなオールジャンルと呼ばれるイベント系では漫画やイラストのようにひと目で魅力が伝わりにくい(ある程度中身を読まないとわからない)文芸はなかなか伸び悩む傾向にある。また、放送中のアニメの二次創作などではなく、一次創作(オリジナル)はいわゆる「作品買い」「好きなキャラクター買い」というものが無いため、更に伸びにくい傾向がある。

 そのため「一次創作の文芸作品で1年間で500部」という数字は、非常に驚きの数字である。ということを、まずは理解していただきたい。

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 文芸や一次創作に限らず、同人イベントにサークル側として参加したことがある人は、どんな気持ちで自分の作品を持って参加しているだろうか?著者は「自分の作品を知ってもらうこと」を第一目標として、それに特化した活動方針を実行している。

 

 例えばイベント設営時。

 以前にも書いたが、著者は毎回「イリエタワー」と呼ばれる、実に目立つ設営をしている。同人イベントに限らず、他者より目立つようにした方が人の目を引きやすいというのは誰もが考えつくことかとは思う。同人イベント開催時の設営完了ツイートなどで、サークル参加者がよくポスターを掲げているのが分かりやすい例ですね。

 著者もポスターを掲げているが、それに加えて机の上にイリエタワーを形成させている。イベントによって異なるが、例えばコミックマーケットでは1サークルに割り当てられるスペースは机だけで約90x45(cm)で、決して広いものではない。その限られたスペースで他者の一歩先を行く設営を参加者はそれぞれ工夫しているのだが、なぜ著者はイリエタワーという形に辿り着いたのか?というようなことを、もっと整った文面で紹介している。

 

 例えばTwitterを使った告知。

 botの使用はもちろん、どのタイミングでどんな内容を伝えるのか、他の情報をRTなどした時にどんなリアクションをするのか。情報は水物だ。情報化社会の中で、必要な情報を新鮮な状態で少しでも多くの人に見てもらうための工夫について、著者は「受動的な告知」「能動的な告知」として紹介している。

 このTwitterを使った告知の仕方については、同人に関わらない人も一読の価値があると私は思う。

 私も数年前にサークル側としてイベントに参加していた。今は気分で作ったり作らなかったりする動画投稿者だ。当時からブログをはじめ、告知の99%はTwitterを利用していたし、今もそうだ。しかし私はbotを使うことすらしていない。自分の作品を知ってもらう努力を、今も昔も私はほとんどしていないのである。軽く絶望を覚えたが、安定の「ま、いいか」精神でどうにか一命を取り留める。

 

 遠征については以前から言うように、著者は「同人行商人」である。そして著者自ら「真似してはいけない」と言っているので、今回は触れないでおこうと思う。ただ、強いて言うなら遠征には自家用車を使い、エコ・ドライブの仕方は長距離トラックの後ろを走行することなどで身につけたそうだ。もはや生きてることすべてが勉強とでも言わんばかりの姿勢である。免許を合宿で取得し、運転免許試験場で免許証を発行してもらってから4~5年経過するが、その間に一度もハンドルを握ったことのない典型的ペーパードライバーの私がその技術を手に入れるのは果たして何十年後のことだろうか。

 

 コラムについては割愛させていただく。委託についても著者自ら「まだ記すほどではない」とのことで、他の項目に比べて記載が少ないため割愛させていただく。

 

 この本を読み終えて、確かにこれはハウツー本ではないと感じた。ただ、参考にするには十分過ぎる部分がある。著者は運転技術や設営の仕方、魅せ方などあらゆるものを自身の経験や先輩方から学ぼうと気を配っている。同人関連(創作関連)の飲みの席は盗みの場だと言っていることも、その一端が伺える。

 

 この本を読んでいて、昔、私が同人イベントに参加した際に隣になった男性のことを思い出した。敷布も値段を書いたPOPも、ポスターも什器も何もなく、ただカバンから取り出した本を机の上に平積みにして、机の前を通り過ぎる人たちの顔を見ることも、会場の雰囲気を感じることもなく、ひたすら椅子に座ってスマホをいじり続けていた。

 当時の私は自分の配置の前後左右のサークルについてTwitterなどで確認するようにしていたが、会場で愛想笑い一つ浮かべることもなく、黙々とスマホをいじり続けた男性はTwitterで「全然売れないワロタwww」とツイートしていた。サークル主に頼まれた代理ではない。その男性がサークル主であり、その本の作者なのである。

 

 当時の私は、ある種の異物感のようなものを感じたが、今回この本を読んで得心した。彼は「自分の作品を知ってもらう」ことにも「手にとってもらう」ことにも、努力をしていなかったのだ。あるいは、作品作りに没頭して、それ以外のところに何かしらの努力や工夫が必要だということに気がつけなかったのかもしれない。

 その辺りについては、同書のSS「鹿折しをりの物語」を読んでもらえると、少し感じてもらえるかもしれない。

 

 今現在についても、似たような人を見かけることはよくある。私は仮にも動画投稿者である。同じく動画を投稿している人間を相互にしろ一方通行にしろ、それなりの人数を知っている。中にはいるのだ。

「再生数が伸びない」「コメントが増えない」「ランキングに乗れない」

 そう言って、自分の言葉で自分の心を折りにかかる人間たちが。

 私は彼らと違って、特にそういうものにこだわりはない。だが、そうしたものたちについて、真面目に考える必要性があるのかもしれないと、この本を読み終えた後に見かけたこれらの嘆きを見て、少し思ったのでした。

 

 この文章は、読書感想文としては落第点だと思います。ただ、思い出したこと、思ったこと、見ようとしなかったこと……そうした色々なものは、書けたかな?と。

 

 長文乱文失礼しました。

 ではまた。